職人インタビュー vol.3 廣瀬生恵

2022.01.14

鎌倉彫金工房の職人 vol.3

廣瀬生恵Ikue Hirose

人と関わることに苦手意識があったという職人・廣瀬は、インタビュー中「意外とちゃんとした大人になりました」と笑います。WEB制作のディレクターから鎌倉彫金工房の職人の道を歩み始めた彼女に、職人になったきっかけや、どのような想いでお客様と、指輪と向き合っているか、話を聞きました。

職人インタビュー vol.3 廣瀬生恵

「このまま死ぬの、嫌だな」

もともと手を動かすことが好きで、趣味で刺繍をしていました。学生のころから単調な作業が苦じゃなくって、前職の時代は帰宅してから寝るまで刺繍、土日はひたすら刺繍なんてこともありました。

前職ではWEBサイトを制作する会社でオフィスワーカーをしていました。ただ30歳を迎えるころに体調を崩して入院。時を同じくして祖母が亡くなったこともあって、「人っていつか死ぬんだ。このまま死ぬの、嫌だな」って思ったんです。30歳ってもう若くないなと感じていたんですが、例えばそれから5年経った時、「あの時ってやっぱり若かったんだ」って後悔する気がして。だから、もともと好きだった手を動かすことを仕事にできる鎌倉彫金工房の門を叩いたんです。

それから5年が経って、今は副店長をしています。指輪を手作りされるお客様の接客と、作業場での加工、あとは採用も担当しています。

職人インタビュー vol.3 廣瀬生恵

お給料をもらう以上楽しくやっちゃいけないんだって

入社してまず驚いたのは、作業を止めて質問に答えてくれること。正直、前職ではありえないことでした。気軽に聞いていいんだ、そして優しく答えてくれるんだっていう。もはやカルチャーショックですよね。

それまで職場ってもっと殺伐としているものだ、お給料をもらう以上楽しくやっちゃいけないんだって思っていました。それが当たり前だったから、私も当然、殺伐とした雰囲気で仕事をしていて。でも、ここに入ってそれが当たり前じゃないと気付かされ、今までの自分を反省することができたし、私もこういう人間になろうと深く感じたんです。

実際できているか、自信はないです(笑)人に優しく、いつでもニコニコいるためには自分にゆとりを持っておかないといけないですよね。私って眠いとかお腹すいたってだけで機嫌が悪くなっちゃうので(笑)しっかり食べること、大切ですよね。

職人インタビュー vol.3 廣瀬生恵

たった数時間が、一生の思い出や気持ちになる

正直に話すと、この仕事を選んだのはものづくりしたいという動機からで、実はもともと接客の仕事はそこまでしたいわけではなかったんです。あまり社交的な性格ではないので……。入社したばかりの頃は果たしてできるのかという不安がありましたし、今もちょっとドキドキすることもあるんですよ。

でも、鎌倉彫金工房の接客って、接客というより人と人とのつながりな気がするんですよね。先輩には「お客様に寄り添う」ことを教わりましたが、ひとつのものを作る瞬間を共有している仲間のようなイメージなんですかね。「一緒に楽しい時間を過ごしましょう」という気持ちでお客様に接するようにしたんです。そう思えるようになったから、不安に思っていた接客の仕事も楽しく続けられているんだと思います。

あともうひとつ、接客する上でも加工をする上でも絶対忘れてはいけないことがあって。それは、私たちにとっては毎日のことだけれど、お客様にとっては今日のたった数時間が、一生の思い出や忘れられない気持ちになるということです。

例えば、一つの席で午前と午後、二組様の予約がありますよね。だから時間が迫ってくると、午後の席を開けなきゃって焦りの気持ちが出てきそうになることがあるんです。そこで「でも一生身につけていただくモノなんだよな」っていうのを思い出して、ゆっくり選んでください、ゆっくり作ってくださいって気持ちでいるように心がけています。

職人インタビュー vol.3 廣瀬生恵

つながりが長い時間続くことが、この仕事の醍醐味

この仕事の醍醐味は、“今日だけじゃないこと”だと思います。手作りするのは今日だけですけど、そのリングは一生モノ。メンテナンスやサイズ直しといった修理などで、お客様とのつながりが長い時間続きます。

加えて、ご結婚指輪を作りにいらしたお客様の中には結婚何周年の記念のリングを手作りされるお客様もいらっしゃいますし、お付き合いされている時にペアリングを手作りされた方がまたご来店くださって「今度は結婚指輪を」というご夫婦もいらっしゃる。そういう意味でも、長い時間お付き合いができる。そこに、この仕事の醍醐味、面白みを感じます。

今後も、技術は常に向上させたいです。こういうデザインが作りたいですという相談をいただく時、自分の引き出しを使ってできるかできないかを的確に、素早くお客様に伝えられる人でありたいからです。気持ちの面では先に言ったように、心に余裕を持って、思いやりを忘れない人でありたいと思います。

職人インタビュー vol.3 廣瀬生恵

廣瀬のおすすめリングは

甲丸デザイン
職人インタビュー vol.3 廣瀬生恵

昔からあるリングのデザインで、長い間、飽きずに使っていただけると思います。シンプルな雰囲気がお好きな方、キラキラした感じがお好みではない方であれば、指輪の内側に誕生石を入れるなど、そういったことを楽しんでいただくのもおすすめです。

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